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再会の日から僕は少しずつ元気を取り戻していきました。
学校では『また明るくなったね』とか『なんか前より可愛くなったね』とか言われ、女子から告白されたこともありました。もっとも、僕はKさんの事が頭にあって断ってばかりでした。勉強も捗るようになり、経済的な理由から進学は諦めたにしろ、まだ目標は漠然としてましたが就職を目指して頑張ろうと思うようになってました。
バイトも再開しました。無断で辞めたので、怒られると思ったのに、みんな温かく迎え入れてくれて子供ながらに人の情けを感じたりしました。
Kさんとの逢瀬は、もちろん続いていました。会うのはバイトのない夕方から夜か、日曜日。公園とか危険のある場所は避けることにしました。
Kさんに勉強を教えてもらうこともありました。
意外と文系に強くて、法律的な知識なんか弁護士さんじゃないのかと思うぐらいでした。
『Aさん、どこの大学だったの?』
『俺?高卒やよ。工業系』『うっそだあ!』
『ほんまやて。法律は好きやから知ってるだけ』
『でも工業系だったら、理数も強いんじゃないの?』『ビブンセキブンとか?んなもん知らん。授業は寝る時間やし、俺は実習専門』『…よく卒業できましたね…』
『ブービー賞だぜ!』
『(…威張って言うことかよ)』
『あ?なんか言うたか?』
勉強の途中や終わったあとの『息抜きしよう』が僕らのエッチの合図になりました。
勉強するのはKさんのお部屋がほとんどだったから、セックスに進むのが普通でした。
『ほら、見てみ?…スケベやなあ』
姿見の前で、Kさんに後ろから貫かれながら足を広げて座らされてます。
『…いや…やめて…恥ずかしいよ…』
『いーや、やめへん。…さっき、いらんこと言うた罰や。…こんなに大きくしやがって…このまま何回もイカしたるからな、覚悟せーや?』
『…ごめんなさい…もう言わないから…』
…こんな、少し変態なこともしばしばありました。
ある日、終わったあとでKさんがふと言いました。
『…英雄ではなく、他より優れているでもなく、むしろ弱々しい存在。ただ、逆風の中で拳を握り締め、顔を上げて立っていられるだけの強さだけは持っている。そんな少年…』
『…なにそれ?』
『いや、戯言やよ。オッサンの』
『詩人、みたいですね』
『つまらんリフレインや。理想像やよ、ただの』
僕はKさんの胸に頬をすり寄せました。
『僕が、それになってあげられたら、いいな…』
Kさんは僕の髪を撫でてくれました。
幸せな時間が静かに流れ、二人を包んでいました。
やがて残酷な時を迎えるなんて知らず…。
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